子取り婆

ぼくは母さんと町を歩いていた。日が暮れ始め雪がちらちらと舞っていた。クリスマスイルミネーションがあちこちで輝き道行く人々からもどこか浮かれた雰囲気が漂っていた。
「今夜はごちそうにしようね」と母さんもどことなく楽しそうに話しかけてきた。ぼくもそうだねとうきうきしながら返事をした。
その時だった。
「おかしいですね、その子はあなたとディナーをとる予定はありませんよ。」という声が後から聞こえた。驚いて後を振り返るとそこにはサンタクロースのコスチュームをまとった男性が立っていた。あれは施設によくボランティアにきてくれる教会育ちのKさんだ!!
そして彼は突然「あなたに神の加護はない、コキュートスに落ちよ!!」と唱えた。その途端、隣に立っていた母さんの悲鳴が聞こえた。みると母さんが青白い光に包まれ悲鳴をあげている。いや、これは母さんじゃない。こんなに皺だらけの顔じゃないし白髪でもない。
僕が母さんだと思っていた者は悲鳴をあげながらあっというまに消えてしまった。
すると突然、回りの風景が変わった。クリスマスイルミネーションも道行く人々も消えてしまった。かわりに回りに広がっているのは薄暗い夕暮れ時の墓場だ。
そして僕は思い出した。もう母さんなんていないことを。2ヶ月も前にパート帰り事故にあって死んだことを。父さんは僕が赤ん坊の時に死んで母さんが唯一の家族だったのに。

あ、帰りましょう。みんなが待っていますよ。」Kさんは優しくそう語りかけぼくの手を引いてくれた。
「お〜い、大丈夫か!」「Kさん、A君は無事ですか!」という声が聞こえてきた。みると寺生まれのTさんと神社生まれのJさんだ。二人とも同じようにサンタの格好をして袋を担いでいる。
「済まないな、K。俺たち到着するの遅れて。」
「申し訳ありません。Kさん。」
二人はそう言ってKさんに謝っていた。
「いえいえ、私はこの子のお父様とお母様に呼ばれてここに来ただけですから。それよりも早く帰りましょう。クリスマス会を楽しみにしているみんなを待たせるわけにはいきませんから。」

後から聞いた話しによれば僕は夕方、突然施設からいなくなってしまったそうだ。職員の人たちとクリスマス会を開くために施設へ向かっていたKさん、Tさん、Jさんの3人で手分けをして探していたところ、Kさんが僕を最初に発見したというわけだった。
僕をさらったのは子取り婆というものらしい。Tさん曰く、「目を付けた子どもをあの世に連れ去ってしまう妖怪」だという。
こんな出来事があったものの、施設のクリスマス会はみんな楽しく騒いだ。途中でKさんたちが入ってきてプレゼントも配ってくれた。あのサンタの格好はこの時のためのものだったようだ。

小学生の時、寒いクリスマスの日にあった話。ちなみにJさんのサンタコスの写真は今でも大切に保管してますw




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