鬼の住む家

今は昔、東国からやって来た人が、瀬田の橋(瀬田の唐橋:当時 東から京都に陸路で行くには、この橋を渡るしかなかった)を渡ってきたところで日が暮れたので、宿を借りようとしたところ、近くに人が住んでいない、荒れ果てた大きな家があった。
何故人が住まなくなった のだろうと思ったが、馬から降りて、皆でここに宿をとることにした。
お供の者は下で馬を繋いでそこに居り、主人は奥で皮を敷いて 独り寝ていたが、人里離れたところなので、眠れずに過ごしていた。

夜も更けた頃、火を微かに灯しながら見ると、そばに大きな鞍櫃のような 物が有ったのだが、人も近づかないのに,音を立てて蓋が開いた。
不審に思い、
「もしやここに鬼が居たから人が住まなかったのを、知らないで泊まってしまったのでは?」 と怖くなり、逃げようと思い出した。
さりげなく見ると、その蓋が 最初は小さく開いていたのが、徐々に大きく開くように見えたので、
「これは間違いなく鬼だ!」と思い、
「急いで逃げだしたら、 追いかけられて捕まってしまうだろう。しからば、さり気なく逃げよう」 と思って、
「馬たちが心配だ、見に行こう」と言って起きた。

こっそりと馬に鞍を置いて、這い登って鞭を打って逃げ出したところ、 鞍櫃の蓋が開いて、何者かが出てきた。
極めて恐ろしい声で

「どこへ行こうというのか、私がここに居るのを知らなかったのか?」

と言って追ってくる。
馬を奔らせて逃げながら、振り返って 見たけれども、夜なので、その者の正体は見えない。
ただただ巨大で、言葉にならないほど恐ろしい気配を感じる。
瀬田の橋にさしかかり、どうも逃げられないと思い、馬を捨て、橋の下の柱辺りに隠れた。
「観音よ,お助け下さい!」 と念じて屈んでると、鬼がやって来た。
橋の上で極めて恐ろげな声を挙げて、
 
「川の者よ,川の者よ」

と何度も叫んだ。
「うまく隠れられた・・・」と思っていたところ

「おります」

と答えて下から出てくるものがあった。
そこも闇が広がり、何者なのか分からない・・・

するとそこへ

「破ぁ!!」

太い光線が双筋飛んできたかと思うと、鬼たちを吹き飛ばした!!
「・・・やれやれ、危ないところだったな」
眩い光が治まった頃、暗がりから一人の男が現れた。

「あ、あなたは?」

「私の名前は丁、この辺りの寺で生まれ育った者だ。
何、うちの寺の本尊が、貴方が危ないと教えてくれたのでな。
急いで駆け付けたのだ。
・・・しかし、鬼と一緒に橋まで吹き飛ばしてしまったな。
また親父に怒られてしまうぜ」

そう苦笑いする丁さんを見て

「寺生まれって、いとをかし!」男は改めてそう思った。




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