江戸の奉行所

ここは江戸の奉行所。今、お白洲では奉行の裁きが行われているのであった。

「では義介、先日、一本桜にて異形の者を退けたのは自分であり、
結果、襲われていた大黒屋一行を救ったのも自分である。と、そう申すか」
「その通りにございます」
「しかし、大黒屋親子と共に怪異におうた丁稚の佐吉は、
自分達を助けてくれたのは『寺生まれで霊感の強いTさん』なる者だった。
そう述べておるが、どうじゃ?」
「大黒屋のご主人は私を『化物退治してくれた人』だと認めて下さいました。
年端の行かない小僧さんの言う事です。人が光の塊を撃ち出したとか、何か思い違いをしてるんだと思います。
他愛ない勘違いなら良いのですが、人様を礼金を騙し取る詐欺師呼ばわりして、あげくにこのありさまでございましょう?
私の疑いが晴れましたら、小僧さんにはきつくお灸をすえてやって下さい。」

「大黒屋は己が娘を庇う為に異形の者へ背を向けており、誰が祓ったかは見ておらん。
その場に居た者で、一部始終を見ておったのは佐吉のみだが、それでもシラを切るか」
「お言葉ですがお奉行様、子供の言うことのみで断を下すとはあまりにも乱暴に過ぎると言うもの。
私に罪があると仰るなら、きちんとした証拠をご用意頂きとうございますな」

「ほう、きちんとした証拠とな…」
「ええ、そうですとも。その丁稚が言う『光の塊を放って怪異を祓った、寺生まれで霊感の強いTさん』
とやらを、ここに連れてきてもらおうじゃありませんか」
「その者がおれば、罪を認めると申すのだな?」
「はい、そんな奴が本当に居るなら、私は礼金をちょろまかそうとしたケチな詐欺師で結構でございます」

「おう義介、俺は今はこうやって侍をやってるが、元々は寺生まれなんだよ。
で、T山だからTとだけ名乗ってたら、町の連中は俺をTさんと呼ぶようになった」
「えっ?」
「でもって、それなりに強い霊感ってのも持っててな… 破ッ!」


後日、江戸の町に『狐火を使う妖怪が奉行を喰い殺して入れ替わり、お裁きをしている』と、うわさが流れたという。




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