妖精

友人に裏切られ、全財産を失い、荒れた暮らしで体を壊し、
不治の病に冒され、ひとり寂しく死の床についている男がいた。

ある夜、突然、その男の目の前に妖精が現れた。
「どんな願い事でも構いませんので、あなたが叶えたい事を3つ言ってください」
光り輝く妖精は、微笑を浮かべながら言った。

男は妖精を見て、少し考えてからこう答えた。
「友情と財産と健康が欲しいです」

「友情と財産と健康ですね。具体的には、どのような?」
妖精はさらに詳しく尋ねた。

「私を裏切った友人が、私に謝罪をしに来て、昔のような付き合いに戻りたいです。
世界一の大金持ちになれるだけの財産が欲しいです。
一生病気や怪我で苦しむことなく、この世の誰よりも長生きしたいです」
男はため息をつきながら答えた。

「分かりました。神様にそう伝えます」

「あのう……」
男は躊躇いがちに妖精に声をかけた。

「何でしょうか?」
妖精は不思議そうに首を傾げた。
「いえ……、何でもありません」

「それでは、これで失礼させていただきます」
「はい……」
「あ、それから、つまらないものですが、これはご協力の品です」

妖精はアンケート用紙を鞄に仕舞うと、ボールペンを男に差し出した。

そのときだった。

「破アァッー!」

窓ガラスをぶち破って青白い光弾が飛び込んできた。
光弾は妖精の頭をぶち抜いた。
男が悲鳴を上げていると、窓から寺生まれで霊感の強いTさんが侵入してきた。

「危ないところだったな。
あのボールペンを受け取っていたら、
願い事を叶えてもらう代わりに魂を吸い取られて、
植物状態のまま永遠に生き続けるところだったぞ」
Tさんは優しい表情で、ベッドに横たわる男を見下ろした。




それから数日後。
男は死んだが、妖精が現れたときのような孤独に苛まれることはなかった。

なぜなら、男は人生の最期に、最高の友人を手に入れたからだ。
寺生まれってスゴイ。男は安らかな表情を浮かべながらそう思った。




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