無人島

俺は磯釣りを楽しむ為にこの無人島にやって来た。
島に民家は一軒も無いのでここに来るには内地の民宿に泊まって船で渡してもらうしか無かった。
だが困った事があった。渡し船が出るのは朝の8時で午後の4時には迎えが来る。
俺は夜明け前には釣りの準備を済ませ日没まで釣っていたかったのである。
その事を民宿の親父に頼むと突然不機嫌になりこう言った「ダメだ。あの島は夜の間はせぶりしゅうのもんだ。人間は近づいちゃなんねえ。」 それ以上は話にならなかった。
そこで俺は午前2時半に黙って小型ボートに乗り込み一人でこの島に渡って来た。
少し早過ぎたようだ。誰もいない島で波の音を聞きながら寝転がって夜空を眺めていた。
その時である。遠くから何十人もの男女の叫び声や悲鳴のようなものが聞こえた。
俺は全身の血液が凍りつく思いで起き上がった。海を見るとなんとそこには数十体の死体が浮かんでいたのだ。
膝がガクガクと震えるのが分かった。そして次に信じられない光景を目にした。
海に浮かんでいた死体達が次々と立ち上がり波に揺られながら海の上を歩いてこちらに向かって来たのである。
俺は恐怖のあまり、顔面が冷たくなりそこから逃げようとした。

だが手遅れだった。既に背後を別の亡霊達に取り囲まれていたのである。
数十メートル離れた所で、ある者は昔の着物を着ており、ある者は軍服やスーツ姿だった。彼らは皆ズブ濡れだった。子供を抱いた女もいた。
彼らはその場にうずくまったり、様々な方向を向いたまま青い顔を伏せて立ち尽くしていた。
遠くで鳴り続けた叫び声が急に大きくなると、そいつらも皆一斉にこちらに向けて近づいて来た。
俺はもうダメだと思った。その時である。
「この島は夜に来ちゃダメなんだよ。そう言われただろう。」見るとそこには寺生まれで霊感の強いTさがいた。
Tさんはそいつらに手のひらを向けると 「破! 破!」と次々に打ち抜いて行った。そしてTさんに打ち抜かれた者達は光の玉になってフワフワと天に登って行った。
Tさんが全て片付け終わった頃に、海の向こうから太陽が登って来た。
朝焼けの中でタバコを吸うTさんを見て、寺生まれってスゴい 改めてそう思った。




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