助けて寺生まれのTさん

ある日のこと。私は山道に車を走らせていました。
その日は友人達と夕食を食べたりドライブをしていました。
雑談が長引いたりあっちこっち寄り道をしたおかげで、
友人達を全員送り終えた頃には日が変わっていました。
この時、私は運転しながら内心ビクビクしていました。
というのも、先ほど送り終えた友人が家に着くまでいろいろと怖い話を
話していたからです。
深夜であることと山道というのもありますが、
それに加え雨天と雨霧で視界が悪く、蒸し暑さもあって何かが
出そうな雰囲気を感じていたのです。

(何も出ませんように・・・)

私は心の中で祈るようにその言葉を何度も繰り返していました。

ドン

突然、車の上から一際大きな音がしました。
雨音と思いたかったのですが、その音には雨音とは明らかに違う重みがあった
のです。
しかも・・・

ガタ・・・ガタ・・・

車の上を移動するような音が続けて聞こえてきたのです。
上に何かがいるのは明らかでした。

気が動転した私は逃れたい一心で山道にも関わらずスピードを
上げました。
しかし、音は一向に止みません。
半泣きになりかけていた私でしたが、その時友人が最後に話していた
寺生まれのTさんの話を思い出しました。
寺生まれのTさんは霊感が異常に強くあちらこちらで心霊現象を解決している
凄い人らしいのですが、本当に怖くてどうしようもなくなった時は
心の中でそのTさんに助けを求めろと友人は言っていました。

(助けて寺生まれのTさん、助けて寺生まれのTさん、助けて寺生まれのTさん)

私は念仏の如く心の中でTさんに助けを求めました。
しかし、事態はもっと悪くなりました。
フロントガラスの上方から人の髪の毛のようなものが見えてきたのです。
「ぬーっと」という表現がありますが、正にその表現通りに髪が垂れていき
遂には白目を剥いた青白い顔が見えてきたのです。

「助けて寺生まれのTさん!破ァ!」

恐怖のあまりに助けるを求める声と同時に、私は話に聞いたTさんの真似を
して手の平をフロントガラスに向けて突き出しました。
その時です。

「人の恐怖心を煽る下級霊め!」

突然手の平が光ったと思いますと、そこから私と同じ様に手の平を突き出し
ながら一人の男が現れたのです。

「破ァァァァァァァァ!」

私はつい急ブレーキを踏みましたが、男は構わずに突き出した手の平から
青白い光弾をフロントガラスに向かって放ちました。

凄い振動を感じましたがすぐに止み、雨音だけが周囲から聞こえていました。

「もう大丈夫だ」

先ほどの男が爽やかな笑みを浮かべていつの間にか助手席に座っていました。
フロントガラスを見ますとあの青白い不気味な人の顔はありませんでした。
それどころかフロントガラスも粉々に吹き飛んでなくなっていました。

「・・・あの、ありがとうございました。ところであなたは?」

名前を聞くと男はTといい寺生まれであると言いました。
そう、その男こそ友人の話していたTさんだったのです。

「いったいどうやってここへ?」

「俺を呼ぶ強い念を感じたんでな。すっとんで来たってわけさ」

私は初めて寺生まれが凄いと思いました。

「あ、来たのはいいけど帰りどうしようかな」

帰れないらしいので私がTさんを家まで送りました。
ちなみにフロントガラスはTさんが直してくれました。




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